明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
そんなことを考えて不安になっていると、勢いよく扉が開いて目を丸くする。
「真田さん」
飛び出してきたのは、黒木さんだった。
「あぁっ、ご無事でよかった……」
彼の姿を自分の目で確認した途端、張り詰めていた気持ちがプツンと途切れて視界がにじんでくる。
「もしかして、心配してくださったんですか?」
「はい。先日の日比谷の騒擾に警察官が多数派遣されたと聞き、いてもたってもいられなくて……」
正直に胸の内を告白すると、彼は目を見開いている。
「わざわざ……。ここに来るのも怖かったでしょうに」
正直、死者まで出た暴動のあとなので、怖くなかったとは言えない。
けれど、黒木さんの無事を確認したいという気持ちが勝った。
「いえ。ご無事ならそれで。お仕事のお邪魔をして申し訳ありません」
深く頭を下げて立ち去ろうとすると、腕をつかまれてハッとする。