明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
鎮圧した側の人の言葉とは思えないけれど、実に納得できる。
「そう、ですね。実は私、なんの苦労もせず生活ができていることのありがたさを噛みしめておりました。たまたま子爵家に生まれたというだけで、そうではなかったかもしれないのに。今の生活に甘んずることなく、努力をしなければと」
思いの丈をぶつけると、彼は目を大きくしている。
「ご立派な考えをお持ちですね」
「あっ、すみません。思っているだけで、なにもできないのですが」
偉そうなことを言って恥ずかしい。
「私も、兵として招集されれば命を落としていた可能性もあります。ですがこうして生きながらえていますので、命を賭して我が国を守ってくださった方に敬意を払いつつ、恥じぬ生き方をせねばと思っております」
凛とした声でハキハキと話す彼には覚悟が見受けられる。
そんな真面目な姿に心が吸い寄せられるのを感じた。