明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

話をしていると、あっという間に家の近くに到着して人力車から降りた。

すると彼は私をまっすぐに見つめて口を開く。


「その髪型、よく似合っていますね」
「ありがとう、ございます」


今日は女学生の間で流行しているマガレイトという結い方をしている。

三つ編みにした髪を輪にしてまとめ、リボンをあしらった髪形は、てるに手伝ってもらわずともできるのだ。

しかし、まさか褒められるとは思いもよらず、面映ゆくて頬が上気してしまう。


「明日、十時にここでお待ちしております」
「はい。よろしくお願いします」


照れくさいような、それでいて心が弾むのを抑えられないような。
こんな感覚は初めてだった。


彼と別れたあとも、胸が高鳴ったまま収まらない。


「素敵な方……」


安否を確認したくて押しかけてしまったが、黒木さんの人となりを知るたびに心が奪われていくのを否定できずにいる。

私は晴れ渡る空を見上げて、明日に思いを馳せた。
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