明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
翌日は裾に牡丹の花があしらわれた紅梅色のお気に入りの着物を纏い、黒木さんに褒められたマガレイトに髪を結った。
「八重さま、お出かけですか?」
「あっ、えっと……。友人とお勉強の約束があるの」
てるに尋ねられて、しどろもどろになりながら返事をする。
嘘をつくのは心苦しいが、黒木さんに会うためだ。
「そうでしたか。行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
十時より早めにおどおどしながら家を出て約束の場所に向かうと、すでに黒木さんの姿があった。
「遅くなりました」
「いえ。楽しみのあまり、私が早く着きすぎたのです」
思いがけない言葉に、頬が赤らむのを感じる。
楽しみにしてくれていたなんて。
「今日はまた一段とお美しい」
これまでは海老茶袴姿だったからだろうか。
目を細めて私を見つめる彼の姿に、恥ずかしさが増していく。
「ありがとうございます」
彼は制服ではなく、白いシャツに黒のスラックス姿。
制服のときより身近に感じられる。