明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「すみません。今のは忘れてください」
困ったような笑みを浮かべる黒木さんは、「気を取り直して、食べましょう」と私を促した。
結局、彼の真意がわからぬまま、レストランをあとにすることとなった。
それから黒木さんと、時々逢瀬を重ねるようになった。
これが初めて味わう〝恋〟という感情なのだと自分でも気づいている。
彼の前では気取ることなく自然体で過ごせるし、大きな口を開けて笑っても咎められることはない。
彼もまた、職務中のキリリとした表情とは打って変わって柔らかな笑みを見せてくれるので、同じような気持ちでいてくれるはずだと勝手に思っていた。