明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
重なる心、引き裂かれる愛
はらはらと雪が舞う、寒さもひとしおの二月。


「八重さま、最近ぐんとお美しくなられましたね」
「えっ……。そう?」


女学校に行く前にてるに髪を結ってもらっていると、そんな指摘をされて驚く。


「はい。もともとお美しいのに、最近は生き生きとしていらっしゃって磨きがかかったようです。他の女中もそう言っていますよ。輿入れもお近いのでは?」
「輿入れ……」


もういつそうした縁談が持ち上がってもおかしくない歳であることはわかっているし、父に指示された家に嫁ぐのだと覚悟もしていた。

しかし、黒木さんに出会って、その覚悟は揺らいでいる。
いや、彼以外の人に嫁ぐなんて考えたくもない。


自分の中にそんな強い気持ちがあることに、少し驚いていた。



数時間後。私は女学校でいつものように背筋をしゃんと伸ばして先生の話に耳を傾けていた。
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