明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
三つ揃えの背広を身に纏った恒さんは、下がり気味の眉が印象的な優しそうな男性だった。
黒木さんよりは背が低く体の線も細い。
そして声色は幾分か高めだ。
無意識に黒木さんと比べてしまい罪悪感があるが、どうにもならない。
双方の両親を伴い挨拶を交わしたあと『恒さんとふたりで親交を深めなさい』と言われ、広い部屋を出た。
彼に従って長い廊下を歩き、さらに階段を上ったところにある部屋は、上等なソファが置かれた落ち着いた雰囲気だった。
和室ばかりの真田家とは違い西洋式で、生活様式の違いに戸惑いを隠せない。
しかし、教えられている通り笑みを絶やすことなく勧められたソファに座る。
彼は向かいに腰を下ろした。
「八重のために紅茶とビスケットを用意させたんだ。嫌いか?」
いきなり呼び捨てにされて眉尻が上がったものの、恒さんは私の夫となるのだから当然だと思いなおして口角を上げる。