明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「いえ。ありがたく頂戴します」
「ふみ、用意して」
「かしこまりました」
私たちのあとを追って部屋に入ってきたふみさんは、女中なのだろうか。
それにしては艶やかな着物を着ている。
いや、これが侯爵家の日常なのだろう。
そう考えながらも、緊張で恒さんの顔を見ることすらできない。
「私たちの部屋も二階にあるんだ。ほとんど使ったことがなく新しいので、気に入るのではないかと」
「ありがとう、ございます」
これだけ広ければ、使わない部屋はいくらでもありそうだ。
けれど、私たちの部屋、と言われて眉根が寄りそうになった。
私はもうすぐ恒さんに嫁いで、ここで一生暮らすのだ。
何度自分に言い聞かせても、どこか夢見心地で実感がない。
しばらくするとふみさんと、別の女中ふたりが部屋に入ってきた。
「恒さま、ご用意できました」
「ありがとう。こちらに」