明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
この縁談は、真田家にとっては渡りに船。期待以上の地位ある家からの結婚の申し入れに、父や母が舞い上がる気持ちはよくわかる。
けれど私は……。
黒木さんのことだけでなく、旦那さまになる人に最初から妾を紹介され、飾り物のような嫁だと宣言されては、冷静でいられるわけがない。
自分がよき家との縁をつなぐ〝道具〟であることはわかっていたことだ。
しかし黒木さんに出会い、道具にはなりたくないと心が叫んでいた。
それでも運命にはあらがえないのだと覚悟をして、こうして今日ここにやってきたというのに。
愕然として視線をさまよわせていると、「紅茶が気に入らない?」と問われて、慌てて首を横に振る。
「いえ……」
私の心が乱れていることが理解できないのだ、この人は。
そんなふうに考えてしまい、表情をこわばらせた。