明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「輿入れが決まりました」と告げて、祝福に満ちた表情で「おめでとう」と言われたら……。
ふとそう考えると足がすくむ。
しばらく呆然と立ち尽くしていると、前回、黒木さんのところに案内してくれた警察官が庁舎から出てきて、私に気づいた。
「あなたは、黒木警部の……。今、巡回に出られているのですが……」
「そう、でしたか」
突然訪ねてきたのだから、そういう事態もあって然り。
しかし、今日は落胆の色を隠せない。
会いたいのに会うのが怖い。
そんな気持ちだったというのに、いないと聞いた瞬間、強烈に会いたいという衝動に駆られた。
「あっ、帰ってこられた」
その声に促されるように振り返ると、制服姿の黒木さんの姿が視界に飛び込んできてなぜか瞳が潤んでくる。
泣いてはおかしいのに。
彼の顔を見た瞬間、張り詰めていた緊張の糸がプツンと切れた。