明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
婚姻が決まった私が――いや、決まっていなかったとしても、男性にこうして手を引かれている姿を父に見られたら、勘当される勢いで叱られることは百も承知。
しかし、それでもいいと思うほど私の心は疲弊していた。
黒木さんは無言で歩き、捕まえた人力車に私を乗せた。
そして、連れていかれたのは人気のない神社だった。
「ここ、あまり人が来ないんだ。だから俺たちも不審な者が群がらないかよく巡回をしている。実は先ほど来たばかりだから、しばらくは警察官も来ないよ」
ふたりきりになれる場所を考えてくれたのだろう。
彼は私の手をごくごく自然に取って、真摯な視線を送ってくる。
その瞳が「全部話して」と言っているように見える。
「もしかして……縁談が持ち上がったの?」
女学校に行かなくてもいいという発言で気づいてくれたのだ。
私は唇を噛みしめながらうなずいた。