明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「私……。お嫁になどいきたくありません」
両親の前では決して言えないひと言を吐き出した。
すると彼は見たことがないほど顔をゆがませ、手に力を込める。
「いかせない。八重は俺のものだ」
「あっ……」
初めて呼び捨てで呼ばれて、腕の中に閉じ込められた。
こんなことをしてはいけないとわかっているのに離れられない。
『俺のもの』と明言され、うれしくないわけがない。
彼も私と同じ気持ちを持っているのだと胸に喜びが広がった。
そして同時に、『おめでとう』と送り出されなくて安堵した。
「好きだ。八重のことが、好きなんだ」
背中に回した手に力を込める彼は、切なげな声で振り絞るように言う。
「黒木さん、私も」
あふれる恋心をもう隠しておけない。
不承の婚約を押し付けられ、華族の家に生まれたのだから仕方がないと一旦はあきらめもした。
けれど、愛してもらえない人のところに嫁ぐのも、愛する人と離れるのも、やはり受け入れがたい。