明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「八重……」
彼はもう一度私の名を口にしたあと、腕の力を緩めて強い視線を送る。
「好きだ」
そして愛の言葉を囁き、唇を重ねた。
彼の柔らかい唇が触れた瞬間、しびれるような甘い疼きが全身に広がる。
しばらくして黒木さんが離れていくと、恥ずかしさのあまり彼にしがみついて顔を隠した。
「俺と一緒に生きてくれないか?」
「はい」
喜びのあまり、頬が緩む。
けれど、どうしたらいいのだろう。
どうしたら彼と一緒になれる?
それから彼は私を社の階段に座らせ、ぴったりとくっついて自分も腰かけた。
私は縁談の内容をかいつまんで話して聞かせた。
「清水家か……。名門一族だな。ご両親が舞い上がる気持ちもわかる」
彼も清水家については知っていたようだ。
「しかしあそこのご長男は、たしか酒癖が悪くて、暴力沙汰を起こしていたような。花街で芸妓に派手に手を上げて、警察が対処したはずだ。金で握りつぶされて表沙汰にはなっていないだろうが」