明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「上流の育ちになればなるほど、妾は存在するものだ。身に余るほど立派な家柄の夫に恵まれたと思いなさい」
期待したものとは真逆の言葉を浴び、眉をしかめた。
そんなふうに思えるはずがない。
華族は男系の血を絶やさず、爵位を継続することこそ責務だと思われている。
けれども、そのために犠牲になるのは女だ。
最近では少なくなってきたとはいえ妾も相変わらず存在するし、女は婚約者以外の男と少しでも口を利けば激しく叱責される。
黒木さんと人力車に乗っていたという事実だけで平手打ちなのだ。
それなのに、男の妾は容認なんて。
しかし、そんな不満を父にぶつけたとて、この問題が解決するとは思えない。
やはり、黒木さんと一緒に逃げよう。
そんな気持ちを強くしながら仏頂面で立ち尽くしていた。
「なんだ、その顔は。それでは清水家の嫁として不合格だ。一から叩き直してやる。もう女学校にはいかなくていい。外出も禁止だ」