明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
初めて知った恋の味。
けれどそれも一瞬で、燃え上がる間もなく火を消されてしまった。
私は頬に伝う涙を拭うこともせず、しばらく声を殺して泣き続けていた。
「八重さま、お食事の時間です。お体の具合はいかがですか?」
太陽が西の空に沈んだ頃、てるが障子越しに声をかけに来た。
「あまりよくないの。いらないわ」
「やはり、お医者さまを……」
「大丈夫だから大事にしないで。お父さまにはもう眠ってしまったと伝えて」
泣きすぎて目が腫れている。
障子を開けずに答えると、「承知しました」という声が聞こえてきた。
ずっと私の味方でいてくれたてるは、心配しているに違いない。
しかし今は誰とも顔を会わせたくない。
黒木さんに会いたい。
会いたくてたまらない。
約束の神社に行かなかったから、彼は私が怖気づいたと思っているだろう。
おそらく……もう、二度と会えない。
「ごめんなさい」
私は彼を裏切ったのだ。