明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「いただくわけには参りません」
「もう少し早ければ大福も無事でしたから、どうかお受け取りください。でも、あなたが傷つかずよかった」
制服姿の警察官は見るだけで背筋が伸びるような威圧感があるというのに、彼はすこぶる柔らかな笑みを向けてくれるので、心が緩む。
私は素直に大福を受け取った。
「助けてくださり、ありがとうございました。私は真田八重と申します。お名前をお聞きしても?」
「私は警視庁の黒木信吾(くろきしんご)です」
「黒木さん……」
屈強なわりには体の線は細めだ。
筋肉質で引き締まっているのだろう。
「車夫でも待たせておいでですか?」
「いえ。両親が厳しくて、車夫を伴うと行動を逐一報告されてしまいます。それが窮屈で、今日はひとりで参りました。帰りの人力車をつかまえようとしていたところでした」
「そうでしたか」