明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「八重」
「えっ……」
焦り、誰かを呼びに行こうと背中を向けた瞬間、うしろから声がして目を瞠る。
この声は……。
「黒木、さん……」
「神社に来ないからもしかしてと思ったら、やはり外出を禁じられたんだね。玄関に大きな鈴がついていたから、出られないんだとわかった」
まさか、今生の別れとなってしまったと思っていた彼が来てくれるなんて。
私はたまらず胸に飛び込む。
「こちらへ」
縁側では誰かに見られるかもしれないと、慌てて部屋に彼を入れ、障子を閉めた。
「どのようにいらしたんですか?」
「暗くなるまで待って、塀を乗り越えさせてもらった。だいたいの部屋の場所を聞いておいてよかった……」
「塀を?」
警察官の彼が他人の屋敷に忍び込むなど言語道断。
余程の覚悟を持ってきてくれたのだとわかった。
「八重。俺のせいで折檻を受けなかったか?」
「い、いえっ……」