明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

「ここの女将は、仕事で世話をしたことがあってね。わけありだと話してある。八重の着物もいくつか準備してくれているはずだ」


四面楚歌を覚悟していたのに、私たちの味方をしてくれる人もいるんだ。

なんだかホッとして目頭が熱くなる。

それからすぐに女将がやってきて、私を風呂場へと促した。


「ご迷惑をおかけして……」

「迷惑なんかじゃありませんよ。黒木さんはうちが悪い高利貸しにつかまって、もう首をくくるしかないというときに助けてくださった命の恩人なんです。大切な人を連れてくるからとおっしゃっていましたが、えらくべっぴんさんで驚きましたよ」

「いえ、そんな……」


大切な人と紹介されて、くすぐったい。


「駆け落ち、なさるんでしょう?」


ズバリ尋ねられ、しばし固まる。
けれど、もうすべて悟られていると思い打ち明けることにした。
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