明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「汚い手で彼女に触れるな!」
怒りに満ちた信吾さんの声のせいで、私の腕から警察官の手が離れた。
「彼女は被害者だ。大切にしてくれ」
「信吾さん……」
ほんの一瞬だけ私を見て悲しげな笑みを浮かべた彼は、背を向けていってしまった。
真田家に連れ戻された私は、さらにいっそう監視がひどくなった。
正座をする私を前に怒り狂う父だったが、ぶたれることはない。
それは〝誘拐〟されたことになっているからだ。
「清水家を怒らせたら大変なことになる。破談どころか、爵位返上も覚悟しなければならなくなるんだぞ」
清水家にどれだけ力があるのか知らないが、婚約を破棄するだけで爵位返上にまで追い詰められるとは理不尽だ。
妾がいると宣言されて嫁ぎたい人なんていないだろうに。
私はただ、自ら犯罪者になった信吾さんのことだけを案じていた。
「お父さま、黒木さんは無実です。どうかお助け下さい」