明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「待て。わ、わかった。警察には手を回そう。だが、お前は清水家に嫁ぐんだ。いいな」
父はしかめっ面をしながらも信吾さんを助けると言ってくれたので、安堵の胸を撫で下ろした。
家から一歩も出られなくなり、外の様子はてるに聞くしかない。
てるは私が駆け落ちしたことも承知していて、想い人と添い遂げられないことに同情してくれているようだ。
「黒木さまは、本日無事に釈放となったようです。辞表も取り下げになったとか」
「そう」
これでいいのだ。
すべて私たちが出会う前に戻った。
――ただ、愛おしいという感情が残っている以外は。
彼と一緒に過ごせた宿屋での時間は、最高に幸せだった。
あのひとときを胸に抱いて生きていこう。
信吾さんがこの先幸せになってくれればいい。
自分に必死に言いきかせ、涙をこらえた。