My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3

「それでは、私が疑われてる可能性も」

 梯子の下からクラヴィスさんの不安げな声が聞こえた。

「あー、負けてないにしてもお前さん結構目立ってたしな」
「そ、そうですか……」
「それと、やっぱ火は俺たちが着いた時にはもう消えてた」

 声のトーンを少し変えたアルさんに私は訊く。

「それって、やっぱり」
「あぁ、多分サカードだろうな。俺があいつの立場だったとしてもこっそり消すだろうし」
「アルさんの知り合いなんですか?」

 これは今訊くことではなかったかもしれないけれど……。

「んー。……親友、だと思ってたんだけどな」

 少し寂しげに笑うアルさん。

「ストレッタの同期でいつも一緒にいてさ、でもある日忽然と消えちまって。まさかユビルスにいるとはなぁ……。ま、元気そうで良かったけどな」

 そして彼はいつもの調子で笑った。

 ――つい先ほどの緊迫したやりとりを思い出す。
 確かに仲の良い者同士の、ましてや親友という間柄での会話では無かった。

(アルさん、結構ショックだったんじゃ……)

「そうそう、そんでな、ドナちゃんにはこれ!」

 いつもの明るい笑顔でアルさんが持っていた紙袋をドナに手渡した。
 ドナは不思議そうに受け取った袋の中を見る。そしてその目が大きく見開かれた。

「これ、」
「雑貨屋の親父が、ドナちゃん達にって」

 紙袋の中を横から覗き見ると、なんと中にはお菓子がどっさりと入っていた。
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