My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「ドナちゃんたちのことも話したんだよ。子供だけで森の中で暮らしてるって言ったら皆驚いてさ。そこの親父なんか――あー、ほら、あのティコ売ってくれなかった店の親父な。見た目に寄らず情に脆かったみたいでよ、涙目になってコレ持ってきたんだぜ。俺にはティコくれなかったくせにな」
ドナは家の中を振り返り口を開きかけ、皆が寝ていることを思い出したのかもう一度ゆっくりと紙袋の中に視線を落とした。
「喜ぶね、モリスちゃん達」
私が言うとドナはただこくりと頷いた。
「それとな、あのラルガのおっちゃんが街に下りてこないかって」
「え?」
ドナが顔を上げる。
「あのおっちゃん家族がいないみたいでさ、ドナちゃんたちさえ良ければ一緒に暮さないかって」
ドナが再びその瞳を大きくした。
「ま、すぐには答え出ないと思うし、おっちゃんもいつでもいいからってさ。でもたまには顔を見せてくれって言ってたぜ」
ドナは言葉が出ないようだった。
思ってもみなかった申し出に頭がついていかないのだろう。でも決して悪い話ではないはずだ。
「な、万事解決だろ? っつーわけで、腹減ったー! 何か食うもん無い? ドナちゃん」
「え? あ、あぁ! あるぞ、えっと」
慌てたようにドナが家の中に戻ろうとする。と。
「私が用意しよう。作り方はさっき見ていたからな。お前たちは行くところがあるのだろう?」
そう言ってくれたのはセリーンだ。
「え! マジで!? セリーンが作ってくれんの!?」
「この場は私とコレがいれば問題ないだろう」
「コレ!? え、俺モノ扱い!?」
「そいつはどうせカノンについて行くんだろうからな」
アルさんを完全に無視して続けるセリーン。
視線の先にいたラグが大きく舌打ちをして、私は焦る。そういえばさっき怒鳴られる寸前だった。
「え、でも、そんなに遠くないみたいだし、ドナがいれば平気だと――」
空笑いしながら言っている途中でラグがのそりと立ち上がる。
「さっさと行って、さっさと帰ってくるぞ」
「は、はい」
ぎっと睨まれ、私はどうにかひきつった笑顔を返したのだった。