My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
ドナも同じことを思ったのだろう。
「あ、アタシ、あいつら見てくる……!」
そう言いツリーハウスのある大樹の方へ駆け出した。
王子はそんなドナを追おうとして踏みとどまり、クラヴィスさんを振り返った。
「ぼ、僕が皆を守るさ。暗殺者なんて、いくらでも追い払ってやる!」
言葉は勇ましかったが、その声音は明らかに動揺していた。
確かにあの変身した姿で応戦すれば不可能ではないかもしれない。
しかし今自警団に狙われているこの状況で、更に暗殺者からも怯えながら暮らさなくてはならないのは精神的にキツい気がした。
特にまだ小さなモリスちゃんやトム君たちが平気でいられるはずがない。
(王子だって、そんなことわかっているはずだよね……?)
だがクラヴィスさんの次の言葉でその強がりも崩れることになる。
「――ただの暗殺者だったなら、殿下お一人でどうにか出来たかもしれません」
眉を寄せた王子にクラヴィスさんは厳しい声音で言った。
「近頃、デュックス派の者がユビルスと連絡を密にしているそうです」
「!!」
ツェリウス王子と、なぜか私の隣にいるアルさんまでもが息を呑んだ。
「あの、ユビルスって?」
私は小声でアルさんに訊く。
「え? あぁ、術士の養成機関」
「え!?」
「クレドヴァロールと同じ大陸にあってな。まぁ、うちほどじゃないが、こっちじゃかなり有名なはずだ」
――ってことは、その暗殺者って術士ってこと……!?