My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
もしその者がラグやアルさんほどの力を持った術士だとしたら、いくら王子でもひとたまりもないだろう。
「ならどうすればいいんだ!!」
王子が叫んだ。
「城に戻ったって、どうせ命を狙われるってことだろう!?」
その声ははっきりと震えていた。
当然だろう。誰だって自分よりも圧倒的に力を持った者から命を狙われていると知ったら怖いに決まっている。
「城に戻りさえすれば、あちらも目立ったことは出来ないはずです」
「そんなの……っ!」
と、そこで王子は急に私たちの方を見た。
「お前ら、そういえば空から降りてきたな。まさか、お前らが」
「え?」
「は?」
私たちは同時に声を上げていた。
「お前らが暗殺者なのか……!?」
王子が警戒の色を露わにして焦る。
「いや、俺達は」
「彼らは違いますよ、殿下」
そう否定したのはなぜかクラヴィスさんだった。彼はアルさんの方を向き微笑みを浮かべた。
「そうですよね。アルディートさん」
「あれ? 俺の名前、言ったっけか」
「貴方は、あのストレッタの術士ですね」
「え」
意表を突かれたアルさんが短く声を上げた。
王子も酷く驚いた顔。
「先ほどの風に乗る術。あの術が扱えるのは術士の中でも数少ないと聞きます。そして、昼間貴方方と同行していた青い瞳の彼、聞き間違えでなければ貴方はラグと呼んでいた」
アルさんの表情から「ヤベ」という心の声が聞こえた気がした。