拝啓ヒトラーさん
6歳の夏。
7月20日木曜日11:25。
最高気温28度、快晴のいい天気の日。
その日も私は病院に通っていた。
先生と前川夫婦は相変わらず、私が出来ること・出来ないことを探り出す作業に夢中だった。
「じゃあ、行きますよ」
先生がそう言うとともに、両手いっぱいに掴んだおはじきを机の上に落とした。
バラバラバラッとおはじきが机に散乱する。
散らばったおはじきはシャンプーをした後の排水口に流れていく泡のようだった。
私は音に反応して机の上のおはじきを見た。
「いくつある?」
先生の問いに机の上のおはじきを数え始める。
に、し、ろく、や、とぉ・・・と二つずつ数えていく。
「57個」
「うん、たしかに。ありがとうね」
先生はうんうん頷くとカルテにいくつか書き込みをする。
「512+4759は?」
「5271」
「695×47は?」
「32665」
「うん、うん。ありがとう」
もう乗算についても分かってるんだね。
割り算は分かる?
平方根についても説明できる?
うん、そうだね。
微分については?そうか、そこはまだ知らない領域なんだね。
いくつかの先生の質問に答える。
何をそんなに書くことがあるのかは分からないが、先生はどんどん手を動かしカルテを書き込んでいく。