月夜に笑った悪魔
苦手にさせられた、といったほうが正解なのだろうか。
救急車のサイレンが苦手なのも、月城組が関係してる……?
可能性は高そう。
暁は大人びて見えるけど、私より年下でいろんな大きなものを背負ってる。
本当に、彼が背負っているのは大きすぎるもの……。
母親を目の前で殺され、父親を植物状態にさせられ、それでも若頭として一条組を背負いながら生きている。
……暁が弱音なんて吐いているところなんて見たことないし、無理していることも多いのではないか。
「……暁、大丈夫?」
そっと声をかけてみると、暁は我に返ったように私から体を離す。
それから落ちた傘を拾って、その傘を私に渡した。
雨が強く降っていたせいで、もうすでに私はびしょ濡れ。
暁はもっとびしょ濡れ。
「……悪かった」
彼はひと言謝ると私と目も合わせずに去ろうとする。
まだ、顔色は悪いまま。
少しも大丈夫なんかじゃなさそうなのに……。
私は放っておけなくて、彼の袖をつかんでひきとめた。
「手、つなごう」
立ちどまって振り向いた彼。
返事を待たずに彼の右手をとって、強く握った。