月夜に笑った悪魔


冷たい手。
彼の体は完全に冷えている。




「それで一緒にいよう。2人でいたほうがあったかいし落ちつくよ」


なんとなくだけど、いま暁を1人にしてはいけない気がした。


放っておけば、暁はまた絶対に無理をする。


大丈夫なんかじゃないのに『大丈夫』って言って我慢するようになってしまう。
……いつかの私みたいに。


そんなのは辛いだけだと私は身をもって知っている。
我慢すればするほど、あとから辛さは倍になってくるもの。





だから、少しでも頼って欲しい。
弱音を吐かないと人間だれだって生きていけないものだから。



私は何度も暁に命を助けられているから、その恩返しがしたい。
まだまだ頼りないと思うけど……少しでも暁が頼れる存在になりたい、そう思った。



傘を持ったほうの手を伸ばして、暁のほうへと傘を傾ける。


彼は瞬きを数回繰り返し、黙り込んだ。



……ヤダ、と言われてしまえばそれまで。
無理に一緒にいるのもまたちがう気がするし……。

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