月夜に笑った悪魔
「あ、あの、暁さんはいいんですか……。こ、こんな女で……」
あはは、と私は笑う。
「ゲロまみれにされたことなら気にしてねぇよ」
「そ、その件は本当にすみませんでした……」
「だから別に気にしてねぇって」
「いや、でも……。こんな汚い女、嫁にしたいと思いませんよね?」
「そんなに、俺の嫁になるのが嫌なのかよ」
「そ、そういうわけじゃ……。暁さんモテるだろうし、好きな女性と結婚したほうがいいんじゃないかなぁと……」
じっと見つめられて、だんだん声が小さくなってしまった。
吐いた件に関しては寛大な心で許してもらえたみたいだけど、機嫌を損ねたら殺されそう。
ビクビクしていれば、大きな手が私の顎をぐいっと持ち上げた。
「俺、おまえのこと好きなんだけど」
その言葉は、数秒後に頭の中に入ってくる。
それはとても信じられない、衝撃的な言葉。
な、な、なにを言って?
わ……私が、好き!?