月夜に笑った悪魔
それは、きっと嘘なんかじゃない。
……本当に敵じゃないんだ。
前は……ナイフを突きつけられたり、私が逃げるために女性の足を踏んだりと本当にいろいろあったけど。
「どうして、急に……?」
気になって聞いてみる。
だって、紫乃は月城岳の命令ならなんでも従いそうだし、一時はあんなに私や暁を狙ってきていたのに。
「……未玖様と巧様に、泣きながら言われたわ。この抗争をとめたいってことと、あなたのことも聞いたの」
静かに車内に落ちた声。
そっか、未玖ちゃんと巧くんが……。
「確かに、このまま月城組と一条組がぶつかれば、どちらかは確実に潰れる。もちろん岳様はとてもお強いし、私は岳様の勝利のために作戦を考えたりしていたんだけど……。
それでも、やっぱりどこか不安なのよ。岳様にもしものことがあったらって……。あの方は、ここで死ぬべき人じゃない」