月夜に笑った悪魔
それといかにも前からその音は聞こえてきて。
しゃがみ込んだままちらりと助手席を見れば、スマホが置いてあった。
それは、きっと紫乃のスマホ。
画面に表示される番号と名前。
電話、だろう。
連続でかけてくるくらいだから、ぜったいになにか急ぎの用だ。
あとで紫乃に伝えないと。
そう思った直後、
「美鈴!」
暁に名前を呼ばれ。
振り向こうとしたのと同時に──ガチャンと鍵が開く音がして、開いた車のドア。
開いたのは運転席のドア。
紫乃たちが帰ってきたのかと思ったけれど……。
車内に光が差し込んで、1番最初に見えたのは……黒服姿の見知らぬ男性。