トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
「おじゃましまーす!」玄関を入るなり、大きな声でそう呟くと「今は誰もいないよ」と流奈は、そそくさと玄関から1番近い部屋へと入って行った。
履いてきたパンプスを綺麗に並べると、流奈の後ろへと続く。
入った瞬間、部屋の中には私の嫌いなタバコの臭いが充満していて、ついついしかめっ面になってしまった自分がいた。
「ごめん、奈月タバコ苦手よね」
そう言いながら窓を開けると、心地よい風が入り込んできて何とか耐えられる空間へと変わっていく。
「なんかね、私はニコチン駄目みたい」
そう言いながら次に興味を示す場所は、何とも言えない、theヤンキーの部屋ってところ。
壁には仲間や彼氏との写真が飾られていて
ポスカで、[ 愛死天流 ] [ 喧嘩上等 ] [ 夜露死苦 ]と、いろんな箇所に書かれていた。
流奈が学校に持ってきている愛読誌のヤンキー雑誌は綺麗に本棚に並べられている
小さなテーブルの上に置いてあるハイビス柄のかわいい灰皿は、タバコの吸い殻が満タンになっていて今にも溢れてしまいそうだ。
つい最近まで確かに高校生だったはずなのに、それを感じさせるものが一切ない部屋で、なんだか流奈らしい。
自分の部屋とは大違いでキョロキョロしていると「とりあえず、座って」と、座椅子を用意してくれた。
「ね!流奈の怖い彼氏は今日ここに来ない?」
「大丈夫!雄也には、今日は奈月が泊まりにくるって話しといたから来ない」
「ふぅーよかった!少し緊張してたわ」
「だろうね!まじクソ怖いから」
その時、タバコを加えライターで火をつけようとした瞬間、流奈の手が止まった。
何もなかったかのように、タバコを口から放すとそれを元に戻す。
私のことを気にして吸うのを止めてくれた流奈を見て一瞬だけ笑えば「なによ」と流奈も笑った。
こうゆう気の使いまわしをする所は、やっぱり不良ならではなのか?なんて思ったりするけど、顔に似合わずそれを自然とこなす流奈もまた好きな一面だったりする。
「流奈が言うくらいだから、超やばいね!」
「でも、あたしも負けてないけどね」なんて笑う流奈を見て、いつもと変わらない彼女の姿に安心している自分がいた。