トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
それから私たちは尽きることなく、たわいもない話でバカ笑いしながら時間だけが過ぎて行った。
夕飯は簡単なものにしようと、二人でコンビニに行ってお弁当や大量にお菓子を買いこんで、流奈の地元をなんとなく案内して貰いながら、ゆっくり歩いた。
いや、歩かせた……に等しい。
「え、バイクで行かないの?」と家の前に止めてあるバイクに一瞬で跨った流奈を阻止したのは紛れもなく私で……
もしも警察に捕まったら……なんて考えただけで恐ろしくて、すぐに父親の顔が浮かんでくるのを今だけはと必死で消そうとする。
「歩くのだる~い!!」なんて文句を言っていた流奈も、歩くのもまんざらじゃなさそうで
「たまには、のんびり歩く夜も最高だわ!!」なんて、免許もない15歳の流奈が見せる笑顔は、なんだか幼く見えた。
夕飯を買いに行ったのに、すっかり遅くなっていて「そんなに外にいたぁ~?」なんてまた二人で爆笑して、宴の続きが始まる。
高校の時、こんな風に笑い合えていたら流奈は、少しは退学を躊躇してくれたのかな?なんて思ったりもしたけれど、高校の話を一切しない辺りそうでもなさそうだなと思った。
「ねぇ。先にシャワーでも浴びてくれば?」
「本当?ならお言葉に甘えて……!!」
あまり遅くなっても家族の人に悪いと思いながらお風呂に入る準備をする
「あーーーーっ!!!」
「なによっ!!!どした?」
「私、パジャマ忘れた……」
「え、その大荷物はなに?」
「これ……?色々……っ」
アハハハッと大声で「やっぱりバカだ~」なんて大爆笑している流奈を見ながら一緒になって笑う。
何が楽しいのか、今のうちらならきっと箸が転がり落ちただけでも笑い続けられる自信がある。
お腹を抱えながら、流奈はタンスを開けると私にタンクトップと、Tシャツと、ジャージを貸してくれた。
「あざ~す!!」
そう言いながら受け取ると、私はニヤけた顔がなかなか元に戻らないままシャワーを浴びさせて貰った。