トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜


赤いキャップを被った少年が小さい袋を片手に、こっちの方にスケボーで向かってきている。

ん……?ようへい??

目を凝らしてみると、間違いなく陽平だった。


良かったっ!!!と、大きな声で発しそうになったが、平常心を保ちすました顔してその場に立ち尽くす。

お互いに顔がはっきり見える所までくると、陽平は私に気づいたようでびっくりしながら、私の傍まできては笑顔で話しかけてきた。

「おう!え!てか本当に来てくれたんだ!」

大きい声で嬉しそうな陽平の笑顔を見た瞬間、私の鼓動が速くなり、次第に顔まで赤らんで行くのが分かった。


ダボっとした白のロゴTにベージュのチノパンを腰パンしている陽平……


目の前にいる陽平が、とてもかっこよく見えて、私は目を反らした。



身長もあるからなのであろうか、制服とは違って私服姿の陽平は凄く大人っぽい。

そして、まじまじと陽平を観察したのはこの日初めてかもしれない……。


いや、違う……。そんなことはない!!

初めて私服姿の陽平を見て、その新鮮さにびっくりしただけだ。

私が好きなのは、あのかっこいい聡っ!!

そう、陽平から目を反らしては自分に言い聞かす。


「いや!陽平のこと見に来たわけじゃないよ?」

「えっ!?」

「シャー芯が無くなったから買いに出たの!たまったまこの道が通り道で……だから寄ってみただけだよ」


ヘッタクソな小芝居をしていた自分に恥ずかしくなって陽平と目が合わせられないでいる。

「なんだよ!たまたまか……なーんだ」

残念そうに口を尖らせながら、ポケットからガムを取り出すとそれを噛み始める。

「そう、たまたまに決まってるじゃん!!陽平も買い物?」

陽平の持っている袋を見つめながら話すと、


「あ?これ夕飯!今コンビニで買ってきたとこだよ」

そう言いながら、私の目線の所まで持ち上げると


「ちなみに温めて貰ってある♪」なんて嬉しそうに私に見せてきた。

「それ……ここで食べるの?」

「うん!」

「あ、そうなんだ……」

笑顔でそう答えた陽平を見た瞬間、なんでか胸が苦しくなった。

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