トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
会話がある食卓
みんなで一緒にご飯を食べる
当たり前のようで、でもいつからか
うちの家族にはその当たり前が存在しなくなっていた。
笑顔や会話なんてものは、何処かに置いてきてしまったのだろう。
涙がこぼれそうになるのを隠すように下を向いたまま包丁でお餅を切っていた。
「夏美ちゃん!お餅きる前に包丁を水で濡らしてからだとお餅が張り付かないからね」
すかさず、ホットプレートでもんじゃを焼き始めていたおばさんのアドバイスが飛んできた。
なんか、こういうの……いいなぁ……。
こういう温かいリビング、私は欲しかった。
そう思えばより涙が込み上げてきてしまう。
声が震えそうになるから、大きな声で返事した。
「はーい!!!」
「ははは。夏美、声を張りすぎ!」
「ギャハハ」
みんなで笑いながら作った
"明太もちチーズベビースターもんじゃ"
格別に美味しかった。
はじめて食べた"もんじゃ"だからきっと人生の中で忘れられない味。
目に焼き付いているあのグツグツした美味しそうな生地
ソースの香ばしい匂い
いつまでたっても私の中で鮮明な印象で残っていくのだろうと流奈の家族の会話が聞こえてくる中、私の心の中で静かにそう感じていた。