トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜


「ねぇ……お母さん?お餅ないの?」

流奈がおばちゃんに問う。

その二人のやり取りを見ていると、流奈はおばちゃんみたいなお母さんになるのかな?なんて想像してみたりして。

それに、なんだかおばちゃんも流奈も楽しそう。

家には帰ることもなく、親とも上手く行ってなくて、遊び惚けていた流奈が妊娠したことによってこうしてみんなで食卓を囲んでいる。

きっとこれはお腹の赤ちゃんが繋げてくれた絆なのだろう。

そう考えると、あの時16歳で出産することを反対としか思えなかったが、こんな風に流奈が変わることで色んなことが変わっていく。

なんだかとても温かくなる。


「あるよー確かお正月に買ったあまりが食器棚の引き出しにあるはず」

「え、それ平気なの?」

「え、大丈夫よ」

そんな会話のやる取りをしながら「ちょっと、取ってきて!」なんて流奈の弟はさっそくパシリにされている。

ああ、やっぱり……

どこにでもきっと、きょうだいならありえる光景だ。

でも少し微笑ましいきょうだい感、素直にお姉ちゃんの言うことを聞いて返事している流奈の弟が可愛く思えた。


「姉ちゃーん、お餅何個?」

「2つでいいや!あ!あとさ冷蔵庫からチーズと明太子も持ってきて」

いつもこうやって弟は動いているのだろう。
文句も言わず、注文通りこなしていく姿を目で追っていた。

「はい、持ってきたよ」

どうやら完璧なウエイトレスのようだった。


よし、今日は私も完璧なアシスタントに徹底しなければと思い、台所へ向かう

「お餅は切るでしょ?私やるよ!」

「ありがとう!じゃあ小さめの角切りにして」

お客さんなのに平気でやらせる所あたり本当に流奈らしい。

まぁ、そんなところが私は楽なのだけど……。


「はいはーい」

私はこの時間だけでも
ここの家族の一員になれた気がして嬉しかった。

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