トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜



流奈の出産から暫くすると、梅雨も終わりに近づき、いよいよ本格的な暑さを迎えた。

ジリジリとした暑さ

もわぁ~とする生暖かさ

じっとりとワイシャツが張り付くそれは、不愉快でしかない。


夏生まれだというのに、私はギラギラの太陽も、紫外線も苦手なのだ。

それなのに相方の流奈は「夏だ~!!」と喜んでいるから理解しがたい。


そして7月といえば、二人の誕生月。

私と流奈は、一日違いで17歳になった。

お互いに誕生日おめでとうと、メールを交わした日の夜、流奈から着信があった。

「もっしー?」

少し鼻のかかった声……

久々の流奈の声を聞いてなんだか懐かしくホッとしていた。

「どした?ちゃんと睡眠取れてる?」

「んま、寝れてなくても若いから大丈夫よ!」

「確かにね!」


そんな事を言いながらも、私は流奈の身体を心配していた。

もちろん彼女のことだから弱音は吐かないだろうし、大丈夫?なんて問いただしても間違いなく余裕~!!と返してくるに違いない。

それでも少しでも休んで欲しいと、私は流奈へ連絡するのをずっと控えていたのだ。

だけど、それも出産して一か月も経てば、きっとリズムでも掴んだのであろう、だからこそ連絡してきたことも分かってしまう。


待ちわびていた電話を何喰わない感じで平然を装っている私も、本当は"愛"を見たくてしょうがなかった。

きっと流奈のことだからそれを察してくれたに違いない。

「あのさ、愛の1カ月検診無事に終えたから、遊びにきてよ」

「いいの?行く行くー!」

私はさっきまでベットに腰をかけていた姿勢から
飛び上がるように起き上がり「友達で会わせるのは奈月が一番初めだ!」なんて言う流奈の言葉にもっとテンションが上がってしまっている。


「なら待ってるね!」

「楽しみにしてるっ!!」

そう言いながら電話をきると落ち着かない気持ちで部屋をウロウロしながら、持っていた携帯を見ながらニヤついてる自分。


なんとも言えない気持ちが込み上げてくる

流奈が産んだ子供に会うなんて…
嬉しい気持ちと不思議な気持ち…

そして母親になった流奈を見るのもなんだか歯痒い


再びベッドに寝転がると、流奈から入ってきた誕生日メールを見返しては、一年前を思い出しそのまま眠りにおちていた。

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