トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
「ねぇ?聞いてるの?ねぇ、ってば!!」
その瞬間、ビクンと身体が反応して、めぐみは私の肩を揺すっていた。
めぐみの方へ顔を向けると、少し不機嫌そうな顔をしている。
「あ、ごめん……」
「何度も呼んでるんだから気持ちは分かるけどさ……」
そう隣にいた姉までも、私は深い悲しみから抜け出せずにいると思っている。
それはもちろんのこと。
だけど今の私はもっと深い憎しみとも闘っているのだ、その怒りは目の前にいる男に。
再び、目の前の男を睨みつけると相変わらず私のこと視界に入れない叔父がいる。
「ねぇ、奈月…今日、お父さんとお母さんは、ばあちゃんちに泊まるって、奈月はどうする?」
「えっ!あぁ……体調悪いから家に帰って休もうかな」
「まぁ、そうだね。私は、ばあちゃんちに泊まって明日帰るわ」
「……うん。」
「お父さんもあんな感じだからさ、奈月は家ついたらちゃんと、私の携帯に電話して!ちゃんと家電からね!」
と、こんな時にさえ念を押されている私は、誰からも信用がなくて、虚しさに襲われてしまう。
もうとにかく一人になりたい……。
高校に入ってから、少しだけ人間らしくなったと思っていた。
地元から離れ、少しでも新しい環境、新しい自分……それを手に入れ始めたのに。
このままではまた自分を失ってしまうそんな予感がして、それに脅えている自分もいる。
もういやだ。
戻りたくない
けど、もしかしたら暗闇に引きずり込むはあの時我慢して自分を犠牲にしてしまった過去の幼い私だろうか...…
過去の幼い私が私を支配しているのだろうか……
その瞬間、やはり目を向ける先は、目の前の男だった。
今の私の顔は一体どんな顔をしているのだろう。
唇を噛みしめ、今まで私を苦しめてきた奴の顔を睨み続けながら、脳裏に焼き付けていた。