トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜

だけどそんな私の言葉に相手の反応を知りたかったのも正直なところで、結局の所、試していたのかもしれない。

目を反らすことなく、康平を見続けた。


「どうして私と付き合いたいと思ったの?私はあまりいい過去をもっていないし簡単に言えば黒い過去ばっかり。そんな女と付き合うのやでしょ?」

康平の告白に、興奮が次第に高まっては熱せられていた
私の過去を知ったら逃げていくに違いない……

「えっっ?!黒でも青でもいい!俺は過去なんて全く気にしないよ。だってさ過去だから。目の前にいる今の奈月しか興味ない」

そう言い放った康平は「過去がなんだってんだよ」そう小さく付け加えると、大きくため息を吐きだす。


私はというと、瞬きをすることすら忘れてしまいそうな位、康平のあっけらかんとした態度でそう言い放ったセリフに驚きを隠せなかった。


そうすぐに、いい切った人は今まで居なかった。

過去なんて……
所詮過去と言い切れる人なんて……。


ずっとそんな風に割り切れなくて苦しんでいたのに、意外にもあっさりと、その思いをぶち壊してくれた康平……

まさに拍子抜けとはこのことだろう。

だけど、本当はとても嬉しかった。

だから私も真っすぐな気持ちで彼を受け入れたんだ。


付き合ってからも、ごくごくたまに悪夢を見てうなされ涙を流しながら起きると隣で寝ていた康平の体をゆすり起こした。

「奈月?大丈夫だから、だって夢でしょ。ほらおいで!」

取り乱している私とは正反対で
いつもと変わりない態度で後ろからハグをしてくれて手をギュウっと握って一緒に寝てくれた。


物事をあまり深く考え込まない康平に最初はイライラして調子が狂い、だけどいつのまにか心を開いていてそんな適当とも思える言葉には安心感を覚え、怖い時は怖いとすんなり言える仲になれていった。


そんな"当たり前"が私には幸せで心地よかったんだーーーーーー。

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