トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
私と流奈は子供がお互い生まれてから誕生日プレゼントはなしと決めていた。
だから今回のサプライズは約束を破ってしまったことになってしまうが、どうしても今年はプレゼントをしたかった。
流奈は体調を崩しがちであったから、頑張ってという言葉よりも一瞬でも笑って欲しかった。
「受け取ってください」とプロポーズのように差し出した花束を見て
えーーーー!と大きな声を出してびっくりしていた彼女は、そのあとウルウルした目で笑ってくれた。
「いらない...なんて言えないよ。こんなステキな花。わざわざ来てくれて...明日会うのにさ」
「流奈ならそう言ってくれると思ったから買っちゃった。奮発したからすぐ枯らしちゃダメよ」
彼女は、ぷっと笑いながら頷いた。
私は花束と手紙を渡すと 「また明日ね〜」とすぐ車で帰った。
私は帰りの車の中で音楽を聴きながら、今頃手紙読んで、流奈は喜んでるな……。
と、私はプレゼントした側なのに嬉しくってニヤケが止まらなくなっていた。
私は1通の手紙を、このサプライズ訪問する5日前には書き上げていた。
15歳に出会った時学校でのメモのやりとりが
私たちが親交を深めるようになった始まりでもあったから、メールじゃなくて手書きにすることに意味があったのだ。
私は手紙を書き始めると、周りの声さえ聞こえてこなくて無我夢中で文面をしあげた。