トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
その日、私は保健室の先生にもう授業には戻れないことを告げると、あっさりと早退を認めてくれた。
親に念の為と連絡されたが、留守で誰も出なかったと言われて心からついてると見えない位置でガッツポーズをした。
「ねぇ、ちょっと待って」
下駄箱で、上履きを戻しローファーに足を入れた途端、背後から聞こえた声。
「えっ?」
振り向けば、ここの学校の生徒ではなく、違った制服に身をまとい、髪の毛は金色にメッシュがかっていて、白っぽい色味をした口紅をつけ、私を見つめている。
「あの……なにか」
明らかに中学生ではない目の前のギャルに圧倒されながらも、それでもこの私に何の用なのか不思議でしょうがなかった。
「授業中にかえんの?」
制服のジャケットのポケットに手を突っ込み問いてくる目の前の人になんで説教じみたことを言われなくてはいけないのかなんて思ったけど、
なんだか、悪そうな人じゃない気がして、私はローファーにもう片方の足を入れると、「つまらないからです」と言い放った。
「あはははっ、おもしろいっ!!名前は?」
「え……奈月です」
やはり、悪いような人ではない気がした私は、自分の名前をあっさりと伝えた。
「わたし、弥生って言うの、この間までここの生徒だったんだ」
あ、なるほど……と、一瞬でこの目の前の人がここにいた理由が分かった気がした。
「先生に会いに遊びにきたんだ」
やっぱり。
私が色々聞く前に話をしてきた彼女は、見た目は派手なギャルで、とてもじゃないけど1つ年上なんて思わなくて、大人っぽくて魅力のある人だった。