トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜


私は目の前から立ち去る女を追うわけでもなく、ゆっくり顔を上げると空を見つめる。

そして大きなため息を吐き出すと、あと少しで始まるであろう入学式の会場の体育館へと駆け足で向かう。


目をキラキラさせる者
不安そうな表情をしている者

そんな色んな表情をしている新入生で埋め尽くされていている。


親子で来ている子もたくさんいたが、その様子を1人キョロキョロ見渡しながら、私は出席していた。


クラス別に男女一列ずつ
出席番号順に番号順に座る

体育館入口に張り紙されていた情報を頼りに、並べられたパイプ椅子に静かに腰を下ろす。


私はさきほど起きた出来事がなかったように落ち着いていた。


話し声でザワザワしていた体育館は、
校長先生らしき人物がステージに上がり始めた瞬間と共に徐々に静まり返っていく……。


その時ーーー


静まり返っている体育館内に、上履きのかかとを踏み音をカツカツと鳴らしながら、私の背後に近づいてくる。


振り返ってみれば、さっきの女が堂々と登場していた。

< 78 / 259 >

この作品をシェア

pagetop