愛は惜しみなく与う②


そして言った


「さっきのやつが人を呼んでくる。早かったら5分もかからず人が来る。どこの誰か知らないが、さっさとここから立ち去るんだ」


「おじさんは?」


「おじさん…か。はは…私は少しやることがあるから、もう少しここにいる」


「ボロボロやん。顔色も悪いし。何人来るか分からへんけど、1人では無理やろ」



立ち上がったときは、とても大きくて怖いと思った。でも今は、ヘロヘロのおじさんにしか見えへん

でもあたしの問いには答えずに、おじさんはあたしにもう一度尋ねてきた



「あいつが大事だと言った子だな?」

「だからあいつって誰!話してる暇あったら立ち上がってあたしと逃げるで!」


なんかよー分からんけど、見てしまったからには、この人を置いていくことはあたしにはできひん!


腕を引っ張るあたしの手を、軽く引くおじさん

あたしはそれで少しバランスを崩し、おじさんの隣に膝をついた



そして小さな声で言った




「すまなかったって…伝えておいてくれ。最後にあいつの大事にしてる子に、会えてよかったよ」


< 138 / 419 >

この作品をシェア

pagetop