青の秘密を忘れない
次の日、朝起きてから、忘れないうちにと青いお守りを交換した。

そして部屋を出る間際、青井君が私の腕を引き寄せてキスをした。

部屋を出る時の決まりごとみたい。

私は青井君の背中に手を回しながらそんなことを考えていた。

そしてその日もいろいろと観光をしながら、写真を撮った。

「写真あとで送りますね!」

「ありがとう、楽しみだなー」

嬉しくてはしゃぎながら、頭の片隅では端末本体には入れないでおこうと考えていた。
そんな風に心がバラバラなことを考えていると、青井君はどうなんだろうと少し不安になる。

「最近、篠宮さんが仕事やめた余波で繁忙なんですよね」

ふいに青井君がそんなことを口にした。
思わず、先輩後輩の顔で見つめ合う。

「え、そうなの?ごめんね。いろいろ押し付けちゃったから」

「いやいや、仕方ないですよ!でもまぁ、ちょっと僕に負担がすごいので大変ですね。
あー、宮川さんが割りとフォローしてくれますけど」

宮川さん……。
仕事を助けてもらっているだけなのだから、気にすることはないと思ってもやはり気にならずにはいられなかった。

「そう、なんだ……」

「まぁ、そんなこと今はいいんです!
二人の時間楽しんでるのに、すみません!」

青井君はまた明るく笑って、私の手を握った。

「二週間後の土曜日、会える?」
青井君の笑顔を見て、堪らず私はそう口にしていた。

「帰って来る予定あるんですか?」
「ううん、特にないんだけど一人で帰省するって言えば大丈夫だと思う」

青井君が優しく笑いながら、私の手の甲をそっと指で撫でる。

「僕は大丈夫です。嬉しいけど、無理はしないでくださいね?」
「うん、分かってる」

そしてまた今日の思い出を語り合って、私たちは解散した。

『悩んでることがあったら相談してね』と新幹線の中から送ると、
『ありがとうございます!』というメッセージと共に大量の写真が送られてきた。

そうだ、私たちは二人で思い出を作り始めているじゃないか。
これを信じよう、この青井君の笑顔を信じよう。

私は画面に映る青井君の頬をそっとなでた。
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