イケメン富豪と華麗なる恋人契約【番外編】
内田に騙されていたという真実を知ったとき、大介はとくに日向子を責めることはしなかった。
そして晴斗は、

『金っておっかねー。だから、父ちゃんも金を残さなかったんだな』
『いや、だから、お父さんたちは残してくれてたんだって』
『そうじゃなくてさ、俺たち貧乏だったんじゃん。でも、困ってたら誰か助けてくれたし、料理も裁縫もできるようになって女の子にはモテモテだし、なんかわかんねーけど、姉ちゃんは気づいたら社長とかなってたし……警察に捕まったっていう内田のおじさんよか、俺たちのほうが幸せじゃね?』

その言葉に、日向子は減刑の嘆願書を書くことを決めた。
お人好しのめでたい姉弟と言われてもかまわない。これから先、人の善意に出会うたび、疑うような人生は送りたくない。弟たちにも送らせたくなかった。

そして、そんな日向子を認めてくれたのも千尋だった。

『日向子は日向子の思うままに……あなたに向かいそうな悪意はすべて、私が排除しますので、ご安心を』

内田の悪事を暴くためだけではない。
望月グループの買収阻止で、千尋にはいったいどれほどのお金を使わせてしまったのだろう?
日向子がいくら尋ねても、軽くかわされてしまい、千尋は教えてくれない。
彼は日向子が社長を辞めるまでは個人的なサポートに徹し、辞めたあとは、望月グループの経営アドバイザーという立場になった。
ただ、関連会社の株の売買に関わったこともあり、疑惑を招かないためにも、すべて無報酬で請け負っている。

『心配いりませんよ。お金ならあります。もし、すべてを失っても、また、いくらでも稼ぎますから』

だからこそ、彼自身がやりたいことをしてほしいと思うのだが……。

『やりたいこと……そうですね、七星グループを奪い取るのも楽しそうですが、巨額の資金を動かすマネーゲームは命がけになるので……。今の私は、金のために命を落としたくありません。そんなことより、あなたと築く未来のほうが大切ですから』

千尋はそう答えて、約束の一年が経ったその日に、日向子と入籍した。
現在は千尋も望月邸に同居し、新居の完成を待ちながら、秋に挙げる予定で結婚式場を探している。
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