イケメン富豪と華麗なる恋人契約【番外編】
☆ ☆ ☆
ブライダルサロンの正面、ショーケースに飾られたウエディングドレスを見ながら、日向子は千尋に声をかけた。
「あの、千尋さん?」
「なんですか?」
「わたし、別に大きな結婚式は挙げなくてもいいですよ。こぢんまりとしたヤツで」
お互いに両親もなく、招くような親戚もいない。
日向子も社長を退き、名誉会長はその名のとおりの名誉職だ。立派なホテルで挙式披露宴をしても、逆に寂しいような気がしないでもない。
「なんだったら、写真だけ撮ってもいいかなぁなんて」
「もちろん、日向子の好きにすればいい。ただ、大介くんと晴斗くんには、お姉さんの花嫁姿を見てもらいたい。私の希望はそれだけですから」
デパートのブライダルサロンだからといって、提携先は一流ホテルとは限らない。どんな会場も探してもらえるし、ドレスも指輪も好きなものを選べるという。
「なんと言っても、ひとり娘の花嫁姿です。三輪のご両親やお父上の直人氏、先代社長ご夫妻も、楽しみにしていらっしゃるのでは?」
「それは、そうですけど……」
たしかに、日向子には弟たちがいる。
草葉の陰から見てくれているであろう両親たちもいるが、千尋には誰かいるのだろうか?
「あの……征木副社長でしたっけ? 腹違いのご兄弟って、あの方だけですか?」
「私の知っている限りは。私のような人間が他にいても、知りようがないですからね」
「そう、ですよね」
そのとき、はたと思い出した。
ブライダルサロンの正面、ショーケースに飾られたウエディングドレスを見ながら、日向子は千尋に声をかけた。
「あの、千尋さん?」
「なんですか?」
「わたし、別に大きな結婚式は挙げなくてもいいですよ。こぢんまりとしたヤツで」
お互いに両親もなく、招くような親戚もいない。
日向子も社長を退き、名誉会長はその名のとおりの名誉職だ。立派なホテルで挙式披露宴をしても、逆に寂しいような気がしないでもない。
「なんだったら、写真だけ撮ってもいいかなぁなんて」
「もちろん、日向子の好きにすればいい。ただ、大介くんと晴斗くんには、お姉さんの花嫁姿を見てもらいたい。私の希望はそれだけですから」
デパートのブライダルサロンだからといって、提携先は一流ホテルとは限らない。どんな会場も探してもらえるし、ドレスも指輪も好きなものを選べるという。
「なんと言っても、ひとり娘の花嫁姿です。三輪のご両親やお父上の直人氏、先代社長ご夫妻も、楽しみにしていらっしゃるのでは?」
「それは、そうですけど……」
たしかに、日向子には弟たちがいる。
草葉の陰から見てくれているであろう両親たちもいるが、千尋には誰かいるのだろうか?
「あの……征木副社長でしたっけ? 腹違いのご兄弟って、あの方だけですか?」
「私の知っている限りは。私のような人間が他にいても、知りようがないですからね」
「そう、ですよね」
そのとき、はたと思い出した。