エリート御曹司と愛され束縛同居
美しい秋晴れの空が広がる十月半ば、是川さんから植戸様宅を訪問する副社長に同行するように指示された。
植戸様といえばヘリコプター遊覧事業の大切な協力者だ。
この事業については津守さんからさらに詳細を教えてもらい、情報を整理して理解に努めている。
必要な書類や手土産などを確認し、社用車に乗り込む。
大事な取引先にふたりきりで外出するのは初めてで無意識に身体が強張る。
そんな私を見透かすように、隣に座る副社長が膝の上で握りしめた私の手に触れ、ピクリと肩が跳ねた。
「ふ、副社長……?」
「緊張しなくても大丈夫だ。お前はいつも通りにしていろ。俺に合わせていればいい」
自信に満ちた言い方に小さく息を吐きだす。甘えてはいけないのに触れられた指の温もりに安心してしまう。
「……はい」
どうしてそんなに私の心の動きがわかるの? なんでそんなに優しいの?
これまでに何度も感じた疑問が胸を占領し圧迫する。このままじゃ引き返せない想いに沈んでしまうともうひとりの自分が警告する。
目的地に到着するまでの間、ずっと指は離されなかった。
植戸様のご自宅は歴史を感じる築地塀に囲まれた日本家屋で、門から玄関までの道には立派な松や槇の木が植えられ、手入れも充分にされていた。
案内役の秘書の方について家の中に足を踏み入れると微かな木の香りが鼻をくすぐった。
廊下を挟んだ十五畳ほどの和室に通されると、そこには植戸様がいらっしゃった。
快活に挨拶を交わし、副社長は私を自身の新しい秘書として紹介した。
現在、ふたりは座卓に向かい合って腰を下ろしているので、すこし離れた場所で控えていた。
植戸様といえばヘリコプター遊覧事業の大切な協力者だ。
この事業については津守さんからさらに詳細を教えてもらい、情報を整理して理解に努めている。
必要な書類や手土産などを確認し、社用車に乗り込む。
大事な取引先にふたりきりで外出するのは初めてで無意識に身体が強張る。
そんな私を見透かすように、隣に座る副社長が膝の上で握りしめた私の手に触れ、ピクリと肩が跳ねた。
「ふ、副社長……?」
「緊張しなくても大丈夫だ。お前はいつも通りにしていろ。俺に合わせていればいい」
自信に満ちた言い方に小さく息を吐きだす。甘えてはいけないのに触れられた指の温もりに安心してしまう。
「……はい」
どうしてそんなに私の心の動きがわかるの? なんでそんなに優しいの?
これまでに何度も感じた疑問が胸を占領し圧迫する。このままじゃ引き返せない想いに沈んでしまうともうひとりの自分が警告する。
目的地に到着するまでの間、ずっと指は離されなかった。
植戸様のご自宅は歴史を感じる築地塀に囲まれた日本家屋で、門から玄関までの道には立派な松や槇の木が植えられ、手入れも充分にされていた。
案内役の秘書の方について家の中に足を踏み入れると微かな木の香りが鼻をくすぐった。
廊下を挟んだ十五畳ほどの和室に通されると、そこには植戸様がいらっしゃった。
快活に挨拶を交わし、副社長は私を自身の新しい秘書として紹介した。
現在、ふたりは座卓に向かい合って腰を下ろしているので、すこし離れた場所で控えていた。