エリート御曹司と愛され束縛同居
その日の気分は最悪だった。

仕事を休むわけにはいかないので出社したけれど、作業効率も悪く自分で自分が情けなくなった。

くれぐれも勝手な真似をしないでほしいと兄にメッセージを送ったが返事はない。

今日遥さんは夕方までは帰社しない予定なのが幸いだった。

あまりの調子の悪さに津守さんには体調が悪いのかと心配されてしまった。

こんな私的な件で仕事に支障をきたすなんて社会人失格もいいところだ。

遥さんは渋滞に巻き込まれてしまったようで帰社が遅くなるらしく、阪井さんの許可を得て先に退社した。


自宅に着き、自室に足を踏み入れると、見計らったように兄から連絡があった。

正直応答する気にはなれなかったが、きっと出るまでかけてくるだろう。

釘はさしたが圭太に連絡したのかも気になるので、バッグからスマートフォンを取り出し画面をタップした。

「お疲れ様、お兄ちゃん」

『……少しは冷静になったか?』

挨拶も抜きに単刀直入に用件を伝えてくるあたりが兄らしい。

電話から微かに車の音が聞こえるので恐らく帰宅途中なのだろう。

「圭太と話したの?」

問いかけには応えずに質問に質問で返す。

幼い頃から兄妹喧嘩をする際にいつもこんなやりとりをしてきた。

『時差もあるせいか電話にでない。メールは送っておいた』

やはり私の願いは無視している。

一体どんなメールを送りつけたのか恐くて確認できない。
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