エリート御曹司と愛され束縛同居
「先輩を紹介したのは、澪を幸せにしてくれるって思ったからだ。俺の自慢の、唯一の幼馴染みなんだ、先輩がお前に求めているのはそんなわかりやすい上辺のものや資格じゃない。お前にしかないものだ、説明しただろ?」

「そんなの、ない」

「落ち着けって、いつもそんなに難しく考えないだろ? なんでこの件だけそんなに頑なになって拗らせるんだよ」

はあ、と困ったように髪をかき上げる、その表情に疲労の色が見える。

帰国したてで疲れているのに、私事にこんな時間まで巻き込んでしまい申し訳なさが募った。

「……前の彼氏と付き合っている時も悩んではいたけど、自分のペースを崩したり、取り乱したりしなかっただろ。泣きそうな姿を見るのなんて学生以来だし、お前本気で先輩が好きなんだな……凪さんの気持ちがわかるよ、ちょっと悔しい」

「……どういう意味?」

「大事な妹を、泣く泣く違う男に任せなくちゃいけない気分?」

ほんの少し眉尻を下げて答える口調は驚くほど明るい。

「凪さんは妹を悩ませて追いつめたいわけじゃない。大事だから幸せになってほしいだけなんだ。今回の改築のせいで追い出した罪悪感もあって余計に心配なんだよ、わかるだろ?」

さすがは圭太、兄をよく理解している。

「どうせ変なところで意固地だから自分と結婚する気があるのかとか悩んで、さらには重荷になるんじゃとかで二の足を踏んでたんだろ?」

的を射すぎた発言に思わず瞬きをすると、胡乱な目を向けられた。
< 150 / 199 >

この作品をシェア

pagetop