クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 熱めのお湯を出して頭からシャワーを浴びる。さすがにお湯を張るほど悠長(ゆうちょう)に過ごせず、さっさと髪と体を洗って、出ようと決意する。

 シャワーだけでのぼせそうな勢いだ。逆に頭はすっきりしていく。 シャワーが雨のように降って視界がぼやけ、私は目を閉じた。

 本当に亮みたいな人と付き合っていたなんて嘘みたい。しかも向こうからの申し出で。

『……どうして、亮は私と付き合おうと思ったの?』

『さぁ? どう思う?』

 付き合い始めてわりとすぐの頃、思い切って尋ねた私に、彼ははぐらかして返してきた。不満げに口を尖らせる私に亮は優しく口づける。

『キスで誤魔化した?』

『誤魔化そうとしたわけじゃない。したくなったから』

 変化球なのかストレートなのか。余裕を見せていた私は頬を赤らめるしかない。

 結局、はっきりとした言葉はもらえず、亮がどうして私に交際を申し込んできたのかはわからないままだった。

 一方で彼と交際は、順調で幸せそのものだった。私の日常が(いろど)られるのは、恋人ができたから、というよりも相手が亮だったからだ。

 異性と付き合う経験が初めての私でも、それははっきりと確信をもって言える。

 最初は緊張の連続で、どうすればいいのかわからない私を亮はからかいつつも優しく手を引いてくれた。

 そんな彼だから、なにをするわけでもなく傍にいるだけで心落ち着ける存在になるまであまり時間はかからなかった。
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