クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「迷惑かけてごめん。すぐに帰るから」

「そんなに慌てなくてもいいだろ。バスルームはこの部屋を出て、右のドアを突き進んだ奥。必要なものはたぶんそろってる」

 亮のペースで話が進められる。断ろうとすると、先に顔色を読んだ亮が私の頭に触れた。

「こんな一流ホテルを思いっきり朝帰りって(てい)で出るのもどうかと思うが?」

 痛いところを突かれる。品のいい客層、コンシェルジュも滞在する高級感あふれるロビーを半端な格好で通過していくのはどうしたって(はばか)れる。

 化粧も落とさずボロボロで髪もひどい。自分の現状に、観念するしかない。

「あの、じゃぁお言葉に甘えてバスルームを借りてもいい?」

「どうぞ。なんならバスタブにお湯でも張って、ゆっくりしていけばいい」

 私は彼とは目を合わせないまま、そそくさとベッドから下りる。昨夜私が脱ぎ捨てたと思われるドレスは、律儀にハンガーにかけられていた。

 それと荷物を持って足早にバスルームへ向かう

 白を基調としたバスルームは部屋に見合った広さがあって、アメニティも充実している。化粧水やメイク落としなど外国の有名ブランドのもので、女性客への対応もばっちりだ。

 ひとまず化粧を落としてホッと一息つく。

 続いて、私は緊張しつつキャミソールを脱いだ。なにもなかったとはいえ、どうしても気恥ずかしい。

 大学時代のほぼ丸々四年間、亮と付き合っていた。その中でキスも、それ以上のことも経験した。ふたりで朝を迎えたのだって何度もある。とはいえ今は状況が状況だ。
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